天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
第三章 失った心を辿って


数日間、体調が悪化しなかったのは、栢森が藍衣のそばについて『頑張っちゃう病』が発症しないように見張っていたからだろう。

家事はこなしながらも、一時間働いたあとは一時間横になるなど、しっかりと休息を取った。

そして週末。黎士の運転でふたりは白薔薇の外来棟へ。

白薔薇はその名の通り、白を基調とした洋風の建物だ。西洋建築を思わせる大きなアーチ状の玄関、石造りの柱と繊細な彫刻――病院というより礼拝堂といった印象である。

ロイヤルフロアは富裕層向けであるものの、病院自体は地域住民が日常的に受診できる総合病院だ。

待合室には子ども連れの家族から高齢者まで様々な患者が訪れ、親しみやすい雰囲気に包まれている。

(ここに来るのは久しぶりだな。事故にあったあの日以来――一年ぶりか)

藍衣が階段から転落した際、ここに救急搬送されたのだが、以降は来院せずに野々村という脳神経外科の医師に往診に来てもらっていた。

「感慨深い?」

隣を歩く黎士が訪ねてきたのは、かつて藍衣がここで働いていたことを知っているからだろう。

勤めていたのは主にロイヤルフロアだが、外来棟に来る機会ももちろんあった。

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