天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「そうですね。あの制服を見ると、懐かしい気持ちになります」

視線の先には、淡いグリーンの制服を着た女性スタッフ。その姿がかつての自分と重なる。

「またああやって、患者様のために働ける日が来ればいいのですが」

とはいえ、今の藍衣は患者側。尽くすどころか尽くされる立場だ。

「大丈夫。きっと戻れる。そのために今日、ここに来たんだ」

冷静でぶっきらぼうな言葉とともに、頭の上に黎士の大きな手がのっかった。

驚いて、自分を慰めてくれるその横顔を見つめる。

(……やっぱり、どういう顔をしたらいいのかわからない)

彼の気遣いや優しさを感じるたびに、姉の仇という事実が引っかかって、胸が痛くなる。

ありがとうと言いたいのに、素直に口にできない。それが、なんだかとても……苦しい。

(それに……キスなんて)

思い出すと、それこそ彼を真正面から見られなくなる。

恥ずかしくて悔しい――なのに、心のどこかで浮かれている自分もいて、本当にわけがわからなくなるのだ。

混乱して頭が爆発しそうになる。これはおそらく事故の後遺症云々ではなく、恋愛経験知の低さが原因である……。

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