天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
この日、藍衣を診てくれたのは黎士と、脳神経外科専門の男性医師だ。

同席するとしたら担当医の野々村だと思っていた藍衣は、別の医師であることに少々戸惑う。

とはいえ、カルテは院内で共有されているはずだから、野々村が不在でも診断が大きく変わることはないだろう。

MRIや認知機能の検査など、状態をくまなくチェックする。

最後に訪れた診察室で、すべての結果を確認した黎士が「問題ないな」と見解を述べた。

「そうですね。一通り検査してみましたが、異常は見られませんね」

男性医師も同意する。どうやら黎士の診断に対し、専門医がダブルチェックする形ようだ。結果、ふたりの見解は一致した。

「一度、眩暈で倒れたと言っていましたが、ほかに症状は?」 

「とくにないそうだ。その眩暈も、過労による一時的な体調不良の可能性が高い。なにしろ一年間もろくに外出しないで療養していたらしいから」

「一年間……ですか。妙な話ですね」

ふたり揃って唸りをあげる。なにをそこまで訝しんでいるのかわからない分、不安が募る。

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