天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「確かに事故の外傷自体はたいしたことなかったが、記憶障害があって絶対安静にと言うなら、三カ月、せめて半年に一回は精密検査をすべきだった。ただ安静にするだけで検査をしないなんて、正直理解し難い」

「それって……」

野々村の治療方針が間違っていたのだろうか。

いや、それ以前に白薔薇の医師ではないとすると、彼は何者なのか。本当に医師だったのかという疑問すら湧いてくる。

確かに野々村は採血、点滴などの医療行為はしていない。話を聞いて薬を処方する程度。

処方された薬もほとんどは軽い睡眠薬で、薬局に行けば誰でも手に入るような代物だった。

まさか、父は白薔薇の医師を語る怪しい人物に騙されていた? あるいは――。

考え込んでいると、黎士が悩みすぎるなとでも言うように藍衣の背中にそっと触れた。

「とにかく、その野々村って医師の言葉は忘れていい。これからは俺が藍衣を診る。必要があれば、専門医の意見も聞くから、安心してくれていい」

「……わかりました」

優秀なジェネラリストと専門医が診て問題ないと判断したならそうなのだろう。

藍衣はひとまず安堵の息をつく。

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