天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
もとの生活に戻るのも夢ではないと知って、未来が一気に開けた気がした。



診察を終えたふたりは会計を済ませ外来棟を出た。

そのまま帰宅するかと思いきや、寄りたいところがあると黎士が足を向けたのは外来棟の奥。

検査棟や一般入院棟、医局のある白薔薇本館を通り過ぎさらに進んでいくと、白亜の豪邸が見えてきた。

洋館を思わせるその建物こそ富裕層御用達の入院棟・ロイヤルフロアだ。外来棟をさらに格式高くしたような豪奢な造りである。

「わあ……」

思わず声が漏れたのは、懐かしい記憶がたくさん蘇ってきたからだ。

ここで何度患者をお迎えし、送り出したことだろう。廊下を歩く自身の足音が耳の奥から響いてくるようだ。

「どうしてここに?」

「藍衣を連れてきてって頼まれた」

「私を、ですか? いったい誰に……」

「一年間、藍衣をずっと心配していた人」

関係者用の出入り口を通り抜け、真っ直ぐに向かったのはロイヤルフロアを統括する医師の執務室だった。

厚みのある木製の扉をノックすると、「はい」という気高い女性の声が響いてきた。

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