天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
黎士が「失礼します」とドアを開ける。執務卓に座っていた白衣の女性は、藍衣の姿を見るなり立ち上がり、ふたりのもとへ駆け寄ってきた。

「藍衣!」

「一葉伯母様!」

藍衣より少し背の高い彼女に、包み込まれるようにハグされる。幼い頃に母親を亡くした藍衣にとって、一葉は第二の母ともいえる存在だ。

「ずっと会いたかったのよ、藍衣。体は大丈夫?」

「はい! 叔母様もお元気でいらっしゃいましたか?」

「ええ。変わりないわ」

腕を解き、無事を確かめるように藍衣の両肩を撫でる。心の底から藍衣を案じていたのだと、伝わってくる。

「何度もお見舞いに行こうとしたのだけど、郷一郎に追い返されてしまってね。藍衣はデリケートな状態だから刺激を与えたくないだとか、感染症を持ち込みたくないだとか、難癖をつけられて」

「そうだったのですね……」

それも野々村医師が指示した〝絶対安静〟と〝刺激を与えてはならない〟という治療方針に基づく判断だろうか。

一葉が「まったく」と悪態をつく。

「郷一郎はなにを考えているのかしら、藍衣を一年間も家の中に閉じ込めるような真似をして。見舞いすら許さないなんて、本当に勝手で愚かだわ」

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