天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
このロイヤルフロアを統括する気高き淑女――ではあるのだが、率直で不満があれば容赦なく噛みつく性格の持ち主である。

以前と変わらぬ伯母の様子に、藍衣は安心する。

「それで? 検査の結果はどうだったの? 滝沢くんが診てくれたんでしょう?」

「現状、問題はありませんでした。様子を見ながら少しずつ社会復帰を進めていく形になりそうです」

答える黎士に、一葉は「そう」と安堵の息をつく。

「いよいよ怪しくなってきたわね。郷一郎はなにを考えて娘を監禁するような真似をしたんだか」

悪意を持って娘を閉じ込めていたと、そう疑っているのだろうか。藍衣は慌てて父親を弁護する。

「父は医師の指示に従っていただけなんだと思います」

黎士と一葉が困惑した様子で顔を見合わせる。一葉はこほんとひとつ咳払いをした。

「とにかく、後遺症もないと聞いて安心したわ」

「今後は俺が責任を持って藍衣を見ます」

「よろしく頼むわね、滝沢くん」

一葉はふたりを応接ソファに促す。「紅茶で大丈夫?」と尋ねながら、戸棚から金色の缶を取り出した。

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