天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
『藍衣はすぐ突っ走って無理をする』――そう言われたことを思い出し、自重するように小さく深呼吸をした。

「藍衣。せっかくだから、うちの父のお見舞いもしていく?」

「お祖父様に面会できるのですか?」

藍衣が記憶を失っている間にロイヤルフロアに入院した祖父。病状は詳しく知らされておらず、父からは『面会謝絶』と聞いている。

「ええ。今はだいぶ落ち着いているの。そこの彼のおかげね」

一葉が視線で黎士を指し示す。

「静かに見舞うなら問題ないよ。誰かさんみたいに叫んだりしなければ」

「叫ぶ……?」

誰のことを言っているのか、わからない藍衣はきょとんと首を傾げる。反対に一葉は苦笑いだ。

「とまあ、主治医もこう言っていることだから、見舞っていくといいわ。父もきっと喜ぶ」

一葉の了承を得て、紅茶を飲み終えたふたりは祖父――貞平の見舞いに向かった。

貞平の病室はロイヤルフロア一階の奥。ロイヤルスイートと呼ばれる特別室で、病室に専用の庭がついている。

ほかの部屋よりひと回り大きな扉をノックし「失礼します」と足を踏み入れる。

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