天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
ベッドに横たわった貞平は、藍衣の姿を見て「おお……藍衣か……!」と掠れ声ながらも感嘆の声で迎えてくれた。

厳格と名高い貞平も孫には甘く、くしゃりと皺を深め、優しいおじいちゃんの顔になる。

「お祖父様。長らくお見舞いに来られず、失礼いたしました」

「よいよい。話は聞いている。かわいそうに、ずっと籠の鳥にされていたのか」

まさか祖父にまでそんな言われ方をされるとはと、藍衣は目を丸くする。

「おかげさまで、怪我はすっかりよくなりました。体力が戻ったら、もう一度このロイヤルフロアで働きたいと思っているんです。そうしたら、毎日お祖父様の顔を見に来られます」

「そうか、それは楽しみだ。生きる楽しみがどんどん増えていくわい」

はっはっはと大らかに笑う貞平。

藍衣の記憶の中の貞平は、寝台にぐったりと横たわったまま喋るのもやっとの様子だった。こんなに幸せそうな顔の彼を見られたのはいつ以来か。

手術を成功させてくれた黎士への感謝がじわりと湧き上がる。

「お元気になられて、本当に嬉しいです」

「そこの彼が私に再び生きる時間をくれたおかげだ。感謝している」

< 63 / 252 >

この作品をシェア

pagetop