天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「だから言っただろ。口で説明したところで意味がない」
ふと足を止め、ロイヤルフロアの建物の脇にある庭園を眺めながら黎士がひとり言のようにこぼす。
「藍衣が思い出してくれなければ、意味がないんだ」
入院患者の散歩コースとしてよく使われるこの庭園は、季節の花々が咲き乱れていてとても美しい。ときには患者の要望で花を植え替えたりもする。
そこに思い入れのある花を見つけて、藍衣はふっと笑みをこぼした。
「ああ、あの薔薇、ちゃんと咲いていますね。確か西城様のご要望で植えたんです。……あのときは大変だったな」
西城という高齢の患者が、手術の前日になって突然『最後に薔薇園が見たかった……』と今際の際のごとく漏らしたのだ。
なんとか手術の前に薔薇を見て元気を出してもらおうと、急ぎ薔薇園の造園を手配したが、苗木こそ入手できたものの、当日中に作業を請け負ってくれる業者が見つからず、自分の手で造ることにした。
藍衣の呟きに呆然とする黎士。随分と間抜けな顔をしているので――だが間抜けな顔すらもアンニュイで麗しいのだからなんともずるい――なにか言いたいことでもあるのかと見つめ返すと。
ふと足を止め、ロイヤルフロアの建物の脇にある庭園を眺めながら黎士がひとり言のようにこぼす。
「藍衣が思い出してくれなければ、意味がないんだ」
入院患者の散歩コースとしてよく使われるこの庭園は、季節の花々が咲き乱れていてとても美しい。ときには患者の要望で花を植え替えたりもする。
そこに思い入れのある花を見つけて、藍衣はふっと笑みをこぼした。
「ああ、あの薔薇、ちゃんと咲いていますね。確か西城様のご要望で植えたんです。……あのときは大変だったな」
西城という高齢の患者が、手術の前日になって突然『最後に薔薇園が見たかった……』と今際の際のごとく漏らしたのだ。
なんとか手術の前に薔薇を見て元気を出してもらおうと、急ぎ薔薇園の造園を手配したが、苗木こそ入手できたものの、当日中に作業を請け負ってくれる業者が見つからず、自分の手で造ることにした。
藍衣の呟きに呆然とする黎士。随分と間抜けな顔をしているので――だが間抜けな顔すらもアンニュイで麗しいのだからなんともずるい――なにか言いたいことでもあるのかと見つめ返すと。