天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「それ、俺も覚えてる。西城さんの執刀は俺だった。藍衣が『今日中に窓から見える位置に薔薇園を造る』なんて無茶を言い出したんだ」

「え?」

思い出を共有していた――つまりその記憶は、藍衣が失ったと思っていた一年の間に起きたということだ。

「思い出したのか!?」

興奮気味にまくしたてる黎士。藍衣の手を取って、今にも飛び上がりそうな勢いで笑顔を見せた。

「脳に刺激を与えたおかげだ。思い入れのある景色がトリガーになったんだ……!」

黎士が切れ長の目をわっと大きく見開く。口は綺麗な半月形で、普段の彫刻のような麗しさとはまた違った、血の通った美がそこにあった。

(なんて素敵な笑顔だろう……)

綺麗な顔の人だと認識はしていたが、心を動かされたのは初めてだ。

なぜ自分のことでこんなにも喜ぶのか、そんな疑問すら出てこない程に、呆然とその笑顔に見入ってしまった。

(こんなふうに笑うんだ)

表情の変わらない人だと思っていたのに。こんなにも無邪気で愛らしい笑顔になるとは。

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