天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
その事実がはっきりしない限りは、どれだけ優しくされたとしても心を開くことはできない。

「……頭痛で苦しんでる君に、これ以上ややこしいことを言いたくない」

黎士がぷいっと視線を逸らす。

どうやらまだ話すつもりはないらしい。落胆のこもった息をついた。

温くなった額のタオルをどけて、上半身を起き上がらせる。頭痛はかなり治まった。

「……わかりました。では、朱璃姉さん本人に直接聞くことにします」

そのひと言に、かばっと顔をあげる黎士。

「なにをする気だ」

「朱璃姉さんは、父が所有している別邸で療養しているそうです。体調が落ち着いたら、会ってこようと思います」

「大丈夫なのか? お姉さんの体調についてはよく知らないが……精神的な病なんだろう? そもそも人と話ができる状態なのか?」

「詳しくはわかりませんが、私がこの状況で療養させられていたことを考えると、姉も似たような状況なのかもしれません。会話程度ならできるんじゃないかなと」

黎士が黙ったままソファの隣に腰かける。姉の病状を心配しているのか、あるいは藍衣が遠出することを心配しているのか。

やがて決意を込めた目で顔を上げた。

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