天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
嗚咽に混じる言葉は、藍衣に対する批難でも怯えでもなく、謝罪だった。

「私が全部悪いの……藍衣が怪我をしたのも、記憶を失くしてしまったのも……全部私のせいなの……」

思いもよらない告白に頭の中がぐちゃぐちゃになる。なぜ朱璃がこんなことを言い出すのか想像もつかない。

「それはどういう意味?」

「私はあなたの姉、失格なの……恨まれて当然なのよ……」

「恨み……?」

自分に恨まれるようなことを彼女がしたというのだろうか。記憶のない藍衣には、到底想像がつかない。

「黎士さんも……迷惑をかけてごめんなさい……」

黎士にまで謝罪するのを聞いて、なおさらわからなくなった。『傷つけた』のは黎士の方ではなかったのか。

当の彼も驚いているのか「っ……」と小さな呟きを漏らす。

「本当に……本当にごめんなさい……」

それだけ言い終えると、再びひくひくと肩を震わせて泣き始めた。

すりガラス越しに見えていた彼女の影がずるずると下がっていき、頽れる音がする。

「姉さん……話をさせて……」

ドアに手を当ててそっと語りかけるが、嗚咽が響くのみ。早く出ていってほしいという意思だけが静かに伝わってくる。

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