天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「藍衣。出直そう」

肩に手を置かれ、わずかに冷静になる。黎士の助言に従った方がいい。自分がここにいては余計に姉を苦しめてしまうのだろう。

混乱しているのは病のせいか、あるいは別の理由があるのか――いずれにせよ、これ以上返答を求めても、彼女を追い詰めるだけだ。

いつか向き合ってもらえる日がくる、そう信じて今はその場を立ち去るほかなかった。




車で来た道を戻り、コテージに着いたふたり。どっと疲労が押し寄せてきて、藍衣は倒れ込むようにリビングのソファに体を沈めた。

じんわりと汗がにじむ。黎士がグラスに冷えたスポーツドリンクを入れて持ってきた。

「いろいろ予想外だったな。お姉さんがどうしてあんな反応をしたのか、俺にもわからない」

そうこぼしながら、藍衣にグラスを手渡して自身はソファの端に座る。

「どんな反応を予想していましたか?」

「少なくとも、謝られるとは思わなかった」

「……いったい、姉との間になにがあったんですか?」

これまで頑なに話してくれなかった黎士だが、もう黙ってはいられないと思ったのか、重たい口を開いた。

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