天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
……要するに、推しへの愛に歯止めが利かなくなってしまうタイプなのだ。

もちろん、本人としては相手に危害を加えるつもりはなく、付きまといも愛情表現の一環なのだが。

(いや、それでも犯罪なのは確かよね……)

妹としてはその一途な愛を、止めはするが責めたくはない。

とはいえ、黎士に迷惑をかけていたとしたら、申し訳ない限りだ。

彼がこれまで被った迷惑の数々を察し、藍衣はグラスをテーブルに置いて姿勢を正すと平謝りした。

「姉がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「いや、それはまあいいんだが。よくあることだし」

(よくあること……!?)

ツッコミを入れたくもあったが、話の腰を折るのもはばかられ、彼の言葉を待つ。

「なにがあったのかって話だが。彼女が頻繁に会いにくるから、もう来ないでくれって突き放した」

彼が簡潔に言って口を閉ざす。しばらく経っても続きを言わないので、焦れったくなってきた藍衣は「それで?」と促した。

「それだけだ」

「……それだけ?」

「『もう来ないでほしい』と言った。それだけだ」

唖然として口が半開きになる。まさか本当に……それだけなのだろうか。

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