天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「自分に非がないときこそ、きちんと説明してください。でないと、あらぬ疑いをかけられてしまいますよ」

現に父は黎士が加害者だと決めつけてしまっている。彼が悪者にされるのは藍衣としても気持ちがよくない。

しかし、黎士は「どうかな」と自嘲気味にはぐらかす。

「どういう意味です?」

眉をひそめて尋ね返すと、彼は思い詰めたような目で藍衣を見つめた。

「藍衣は、彼女たちの不幸が〝呪い〟だって言ったら、信じる?」

「彼女たち……? 呪い……?」

物騒な響きにぞわりと背筋が寒くなる。どうして急にそんな非科学的なことを言うのだろう、彼らしくない。

「俺に執着する人たちが次々と不幸になっていく……そんな呪いめいたことが起こるって言ったら、どう思う?」

「……姉さんが、その呪いにかかったって言うんですか?」

沈黙する黎士。まさか、本気でその呪いとやらを信じているのだろうか。

それとも――信じざるを得ないような悲痛な出来事を、これまで何度も経験してきたと……?

藍衣は咄嗟に彼に向かって手を伸ばした。両手で頬を包み込み、パン、と軽く叩く。

「しっかりしてください。呪いなんてありません」

< 97 / 252 >

この作品をシェア

pagetop