さようなら、お別れしましょう
 商人たちは長い待ち時間がないとわかると、ホッとした顔をして足早に立ち去っていく。
 役場内で待っている人は、ジェレンが用意したお茶を飲み、くつろぎながら待ち、焦ったり怒鳴ったりする人はいない。
  
「列がないだけで、こんなに違うなんて……」
「レフィカ様。失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした」
「いいえ。忙しい中、なにもわからない私がいては、迷惑になると思ってました。でも、役に立ててよかったです」
 
 私を町役場に配置したことで、ジグルズ様にも批判が集まるところだった。
 それを回避できて、ホッとした。 
 信頼に応えるどころか、評判を落としてしまうところだった――
 
「なんの魔法を使ったんだ? 行列がなくなったな」
「ジグルズ様!」

 町の見回りに歩いていたジグルズ様が現れ、全員が嬉しそうな顔をした。
 ジグルズ様は木の札に手を取り、窓の紙を眺めて、笑みを浮かべた。

「なるほど。よく考えてある」

 私の説明など、ジグルズ様にはいらない。
 頭の回転が速いジグルズ様は、一瞬で理解できたようだった。
 
「レフィカ様が行列を消してくださったんですよ」
「こんなに静かな環境は初めてで!」
 
 喜びの声にジグルズ様は優しい目を向けた。

「そうか。それはよかった。俺たちはいつも同じ町や人しか見ていない。だから、レフィカが加わることで、なにか違うことをしてくれるんじゃないかと期待していた」

 ジグルズ様はそう言ったけれど、私を町役場へやった理由は、それだけではないと思う。
 私はドーヴハルク人ということもあって、グランツエルデ王国領内で、どうしても警戒される。
 王妃となって、たった一年で王宮から追い出された妻――私の印象はよくない。
 そんな私の印象を変えるべく、ジグルズ様はあえて人の集まる町役場を選んだのだ。

「ありがとうございます」
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