さようなら、お別れしましょう
「ん? 礼を言うのは俺のほうだろう?」
「楽しく仕事ができそうです」

 ジグルズ様は私の言葉に微笑んだ。

「仕事の様子を見に来たというのもあるが、王宮から手紙が届いていたから、ついでに持ってきたぞ」
「王宮からですか? なんでしょうか?」
 
 ジグルズ様の手に王家の紋章が入った手紙が二通。
 一通はイーザック様へ出した手紙の返事だと思う。
 イーザック様の手紙は、夫婦のやり取りと言うより、業務連絡のような手紙である。
 でも、もう一通は違う――

「お茶会!? メリアが主催する王宮のお茶会……」

 封を開けると、メリアからの招待状が入っていた。

 ――なぜ、私を招待するの?
 
 私は王宮にいられなくなった妻。
 その妻を元の住まいに招待する。
 そして、お茶会にはメリアと親しい友人や大勢の貴族令嬢たちが大勢招かれているだろう。

「リースフェルト伯爵令嬢が王宮のお茶会を主催するのか」
「どうやら、そのようです……」
「行くのか?」
「お断りするわけにはいきません」
 
 メリアはきっと私が不在の間に、王宮で権力を握っているはずだ。
 招待を断れば、なにか仕返しされるかもしれない。

「なにかの罠かもしれないぞ」
「そうですね。でも、これはお茶会に私を招くのが目的ですから……」

 毒殺などという物騒な罠ではない。
 私がお茶会の時間だけ耐えれば済むことだと、心の中で自分に言い聞かせた。
 メリアが私を招待した目的は、その場でどちらがイーザック様に愛された妃なのか、周囲に知らしめるためだとわかっている。
 
 ――私に恥をかかせるだけじゃないわ。

 私が形だけの正妃だとわかれば、周囲からはメリアを正妃にし、私を側妃という声が上がる。
 でも、私は正妃でなくなったら、【契約】によって死んでしまう。
メリアからの招待状は、さっきまでの明るい気持ちを暗くさせ、私を現実へ引き戻したのだった。
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