さようなら、お別れしましょう
 他の人たちにも全部聞こえてしまい、言葉にはしないものの、私に同情的な視線が向けられた。

「でも、ジェレン。イーザック様から、初めてお返事ですよ?」
 
 ただし、これが手紙と呼べるものなのかどうかは謎である。

「こんなお返事に喜ばれるなんて……」
「喜んではいませんけど、無視よりはまだいいでしょう」

 ジェレンは目に涙を浮かべて、私から顔をそむけた。

 ――えっ!? そ、そんなにショックだった!?

 そこで初めて気づいた。
 私に対する父やイーザック様の態度が、今まで当たり前だと思っていたけど、そうではないのだと。

「え、えーと、『勝手にしろ』ということは、私の自由にして構わないぞという意味ですよね! ありがたいです!」
「レフィカ様ったら、少しもありがたい手紙ではありませんわ。グランツエルデ王を悪く言うつもりはございません。けれど、それに比べ、ジグルズ様には感謝しております」

 すっかりジグルズ様の虜になったジェレン。
 ジェレンは、胸の前に両手を組んで、目をキラキラさせている。

「王都にいる侍女たちまで、こちらへ呼び寄せていただいた上に、足りないものがないか尋ねられ、なにもかも揃えてくださったんですよ!」
「そんなことが……。ジグルズ様、ありがとうございます」

 嫁いできて、孤立していたのは私だけではなく、侍女たちも同じ扱いを受けていたようだ。

「慣れない暮らしにレフィカ様が耐えているのに、贅沢は言えないでしょう? ですから、私たちもできるかぎり、静かに過ごしておりました」

 私に心配させまいと、侍女たちは黙っていたらしい。

「屋敷で働く侍女が不足していたから、こちらも助かった」
「グランツエルデ王国へ来て、初めて人の優しさに触れた気がします……」

 ジェレンたちに、とても苦労をかけていたようだ。
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