さようなら、お別れしましょう
「誰の領地であっても、同じグランツエルデ王国。豊かになるのは悪いことではありませんわ」

 意外なことに、メリアよりもイーザック様のほうが、私の話を黙って聞いていた。
 そして、なにを言うのかと思ったら――
 
「兄上は一緒に来なかったのか。てっきり、兄上はお前を……」
「違います。ジグルズ様は分別ある方ですわ」
「まるで、俺が分別ない男だと言っているみたいだが。兄上にやましい気持ちが少しもないと言いきれん」

 そういえば、イーザック様はジグルズ様が私を気に入って、屋敷に連れ去ったと勘違いし、突撃してきたのを思い出した。
 なかなか思い込みが激しいようだ。

「もしかして、レフィカ様はイーザック様に嫉妬させて気を引こうとしていらっしゃるの?」

 ――なぜ、そうなるの?

 メリアはメリアで、私とイーザック様の仲を疑い、私に厳しい目を向けてきた。

「レフィカ様は恐ろしい方ですわ。イーザック様を奪おうと、あれこれ策を巡らせていたのですね」

 策を巡らせたのはメリアのほうだ。
 けれど、本来なら、メリアの味方であるはずの令嬢たちは無言だった。
 それもそのはず、私を傷つけ、孤立させようとたくらんでいたのは、明らかにメリアだけだからだ。
 びゅうっと冷たい風が吹き抜けていった。
 花がなくなった庭園は寒ざむしい。
 メリアの嫌がらせだろうけど、花を切り落とした庭は枯れて、ひどい有り様だ。
 令嬢たちは怯えたかもしれない。
 だけど、私は違う。
 この程度の嫌がらせで、怯えると思ったら大間違い。
 後宮生まれの後宮育ち。
 妃同士の嫉妬で、これくらいの嫌がらせは当たり前。
 歩いているだけで泥水を頭からかけられたり、部屋にごみを投げ込まれたりすることもある。
 
 ――花を切り落としたくらいで、精神的なダメージはありませんよ。

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