さようなら、お別れしましょう
「前の王は、ジグルズ様にとったら、実のお父様ですよね?」
「そうです。おれはまだ小さかったから、どうしてなのかわからなかったけど、仲良くなかったみたいです」

 ――第一王子のジグルズ様を戦場へやっていた? 王位を捨てたこととなにか関係があるの?

 国王の命令ならば、逆らえない。
 ジグルズ様の境遇は、父に【契約】を刻まれ、命を握られた私たちと似ているような気がした。

「だから、ジグルズ様を守るため、母さんはなんでもできるんです!」
「なんでも……」

 そういえば、ゼリヤは商人を装い、他国に出入りしていた。
 ゼリヤはジグルズ様が、他国の情報を得るためのスパイでもあったのではないだろうか。

「ゼリヤが商人として、ドーヴハルク王国の後宮に出入りしていたのは、そういうことだったんですね……」

 ゼリヤのことも気になったけど、ジグルズ様が父親から嫌われていたことを知り、驚いた。
 あれほど優秀で人望の厚い息子を嫌う理由がわからない。
 ジグルズ様が王位を捨てた理由に、父親との不仲が関係しているのかもしれない。
 優秀な息子を殺したいと思うほどの憎しみを抱かせた理由はいったい――

「お父さーん、お母さーん。どこぉ~!」

 考えながら運河沿いを歩いていた私の耳に、子供の泣き声が飛び込んできた。
 
 ――これはっ! 困りごとの気配!

「もしかして、仕事じゃないですか!?」
「え? 子供が泣いてるだけじゃ……」
「困っている人です。これは仕事ですね。間違いありません!」
「あっ! レフィカ様、待って! 待ってください~!」

 今日一番の張りきりを見せる私に、ハリルは追いつけなかった。
 泣いている子供を捜し、見つけるとすばやく駆け寄って、話しかけた。

「どうしました!? なにかお困りごとですか?」
 
 私の勢いに子供は驚き、涙が止まり、目を瞬かせて私を見上げた。
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