さようなら、お別れしましょう
30 家族のように(2)
「あ、あのね……お父さんとはぐれて……」
女の子の服装は、町の子供とは少し違っていた。
帽子をかぶり、刺繍入りのエプロンをつけ、背中には頑丈そうな革のカバンを背負っている。
カバンには、女の子の名前が刺繍されていて、はぐれても名前がわかるようになっていた。
「もしかして、ご両親は旅の商人ですか?」
「うん。いろんな町で品物を売ってるの……」
各地を旅する行商人が、珍しい品物を仕入れるため、シャルク・ホジャに立ち寄る姿をよく見る。
どの町にも新し物好きな方が必ずいて、いち早く目新しい品を購入されるのだとか。
家族を連れて、村や町に立ち寄って商売をし、いずれ店を建てるという夢を持つ商人は多い――そんな話を町役場の人から聞いた。
「一人で心細かったですね。私たちと一緒に町役場へ行って、お父さんたちのことを聞いてみましょう」
「まちやくば……?」
女の子にうなずいた。
「もしかしたら、手続きの順番待ちで、名簿に名前があるかもしれません」
「あっ! そうか。商売してるなら、商品が入った荷の検査をして、許可を取るからだっ!」
「そうです。それに、順番を待っている最中かもしれません。お父さんとお母さんの名前はわかりますか?」
「うん!」
女の子は両親に会えるとわかって、涙をぬぐい力強くうなずいた。
「まちやくばって、なにをするところ?
「なに困ったことがあったら、立ち寄る場所ですよ。また迷子にならないように、手をつなぎましょうか」
こくんと女の子は手を繋いだ。
運河沿いなら、まだ町並みは変わらないけれど、新しい道沿いでは、建物を建てる音がずっと聞こえる。
木材やレンガ、石を運び、家ができれば、塀を作る人も多いため、道はいつも資材を運ぶ荷馬車と人で混雑している。
子供どころか大人でも迷う人が多い。