さようなら、お別れしましょう
 ジグルズ様の独身を終わらせようと、躍起になっている侍女たちが、声を潜めて囁きあう。
 声を小さくしても近くにいるので、しっかり聞こえている。
 ジグルズ様は苦々しい表情で、侍女たちを見る。

「照れるって……俺は少年か? まったく……」

 そういえば、ジグルズ様とよく遭遇する気がする。
 でも、それはジグルズ様が、私のことを信用できる人間かどうか、監視しているためだ。
 だから、私のそばにいるのだ。
 
 ――そうですよね?

 ちらりとジグルズ様を横目で見る。
 ジグルズ様と目があって、『わかってますよ』と、にこりと微笑んだ。
 同じように、ジグルズ様も私に微笑みを返す。

「ジグルズ様。今、町の地図を作っていたんですけれど、他にもシャルク・ホジャを知ってもらう方法を思いついたんです」
「それは?」
「お借りした本から、私が南方の国々を知ろうとしているように、本から情報を得ることが多いと思います」
「まあ、そうだな。俺が知らない国へ行く時は、調べてから行く」

 ハリルはジグルズ様の言葉を聞いて苦笑した。

「ジグルズ様は町の情報だけじゃなくて、兵力とか地形まで細かく調べてから、でかけてますよね……」
「なにがあってもいいようにな」

 ジグルズ様の目的は、商人とは目的が違う。
 こちらの目的は、あくまで町の情報である。
 
「一冊の本に、シャルク・ホジャの案内をまとめてはどうでしょう? おすすめのお店や宿屋の情報を前もって知ることができます」
「なるほど。それなら、迷わず目的の宿屋や店に行ける」
「はい。かさばるものではなく、持ち運びしやすい大きさで、町の案内本となる一冊にしたいんです」
「案内本か」

 ジグルズ様は少し考え、それから言った。

「王都や他の町の図書館と貸本屋、宿屋に置いてもいいかもしれないな」
「はい!」

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