さようなら、お別れしましょう
「ベルタだったの……」

 わたくしのがっかりした様子に、なにかを察したベルタは、申し訳なさそうな顔で、小さくお辞儀をした。

「メリア様、申し訳ありません……」
「間違えただけよ。いちいち謝らないでちょうだい」

 ベルタの同情する目が、我慢ならない。

「それより、あなたが戻ったということは、レフィカ様を始末できたということよね?」

 これで、イーザック様はわたくし一人のもの。
 安心して夏の休暇を迎えられる。
 嬉しくて思わず、ふふっと笑みがこぼれた。

「レフィカ様の最期はどんなふうだったのかしら? 惨めに命乞いをしていた?」
「いいえ、その……」
「どういうこと? まさか始末せずに戻ってきたの?」
「レフィカ様のそばにベルクヴァイン公爵……ジグルズ様がいて近寄れませんでした」

 ――ジグルズ様。優秀で王になるだろうと、誰もが思っていたのに、みずから王位を捨てた第一王子。
 
 もちろん、わたくしも知っている。
 ジグルズ様は堂々とした振る舞いや容姿の良さから、令嬢たちからも人気があった。
 でも、父親の国王陛下から嫌われていた。
 だから、貴族たちはジグルズ様との付き合いに、とても慎重だったのを覚えている。

「メリア様。ジグルズ様は優しげに見えますが、見た目ほど穏やかな方ではありません」
「ベルタはジグルズ様を知っているの?」
「私の生まれ育った場所では、善良な人間であればあるほど生きていけません」

 ベルタの生まれは王都の貧民窟で、住む場所もない人間が集まっているところだ。

「お金欲しさに、ジグルズ様を狙い、金目のものを奪おうとした人間を知っております」
「護衛がいたでしょう?」
「それが、誰もいませんでした」
「護衛がいないですって? ジグルズ様はそこまで父親から嫌われていたということ?」
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