さようなら、お別れしましょう
「わ、わかっている! だが、メリアたちがレフィカを殺すと聞いて、俺はメリアのことがわからなくなった」

 イーザック様は額に手を置き、言葉を吐き出した。

「人殺しをたくらむような人間だとは思わなかった……」
「イーザック。お前は大事に育てられすぎた。もっと多くの人間と関わり、人を知るべきだ」
「兄上と俺は違う。俺は異国の人間や見知らぬ人間と、どうやって接したらわからない!」

 イーザック様がメリアを選んだのは、昔から知っていた女性であるというのも、理由のひとつらしい。

「父上に嫌われてから、俺のそばから人がいなくなった。うわべだけの人間ほど去るのも早いとわかってから、人を見る目が鍛えられた」

 父親に嫌われていたと語るジグルズ様からは、卑屈さが感じられなかった。
 
 ――まるで、自分から望んで、そうなったかのようだわ。

 父親から愛されなかったことで傷ついた様子もない。 

「母が違っても、お前は俺の弟だ。だから、俺をうるさく思っても、お前のために忠告することはやめない。そう決めている」

 イーザック様は拳を握り締めてうつむいた。
 愛されることが当たり前だったイーザック様は、今まで自分から愛情を他人に与えようなどと、考えたことがないのだろう。
 だから、メリアをどう扱っていいかわからず、私との接し方もわからなかったのだ。

「明日、俺の友人がやってくる。イーザックはもっと国外のことを学び、多くの人間と会うべきだ。それが、お前の経験になるだろう」
「俺ではなく、兄上が王になればよかったんだ……」

 弱音を吐いたイーザック様に、ジグルズ様は微笑んだ。

「イーザック。お前は努力家だ。もっと人と周りを見ろ。そうすれば、お前はいい王になる」
「王にふさわしかったのは、兄上のほうだ。兄上が王位を捨てた理由を教えてほしい。俺が王となった今なら教えていいはずだ!」
 
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