さようなら、お別れしましょう
 ジグルズ様は黙り、それ以上、なにも語らなかった。
 でも、今の話はとても重要に思えた。
 イーザック様にでさえ、教えなかったジグルズ様の秘密。

 ――ジグルズ様が教えてくれたのは、私が犠牲になった人間だから?

 そして、私にヒントを与えたのではないだろうか――自由になるためのヒントを。
 
「レフィカ。俺の友人と会ってほしい」
「明日来るという異国の友人ですね?」
「ああ。リュザール王国から来る。イレーネ王女が嫁いだ国だ」
「イレーネお姉様が嫁いだ国……」
 
 ――やっぱり、ジグルズ様はなにか重要なことを知っている。

 ジグルズ様を見つめると、困ったように笑った。

「それ以上は言えない」
「はい……」

 私は信用できるかどうか、試されている立場だ。
 でも、教えてくれたということは、ジグルズ様は私を信用してくれている証拠だと思う。

「イーザックを裏切るわけではないが、俺は命を縛る【契約】の同盟には反対していた。王女たちには自由でいてほしいと思っている」
「もし、私が自由になれたら、王宮に戻らず、ジグルズ様のお屋敷で暮らしたいです」

 そう言ってから、これはまるで、私からジグルズ様へのプロポーズみたいだと思い、慌てて訂正した。

「この町で暮らしたいって意味です!」
「わかってる」

 ジグルズ様は口に手をあて、笑い声が響かないよう気をつけていた。
 私のほうも危ない。
 うっかり『妻の不義』になるところだった。
 心臓に手をおくと、自分の鼓動が早い。
 
 ――なんだか息苦しいし、もしかして、死ぬ一歩手前だった!?

 イーザック様の予感は当たっていたのかもしれない。
 ジグルズ様のそばにいたら、きっと私は死んでしまう。
 笑顔を見るだけで、心臓が痛くて苦しいのだから――私は目をそらし、自分の気持ちを殺した。


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