さようなら、お別れしましょう
 イーザック様が戸惑っているのが、扉越しからでもわかる。

「ぐっ……! いいから、ここを通せ!」

 無理矢理、広間に入ろうとしたイーザック様をジェレンは毅然とした態度で、断った。

「王なら、なにがあっても堂々となさいませ!」
「俺のどこが堂々としていないと……」
「ドーヴハルク国王陛下とお会いになったでしょう。対等に渡り合いたいのであれば、余裕のない態度は見せないことですわ」

 たしかに父はどっしり構え、私たちに弱みを一切見せない。
 王位継承争いを勝ち抜いただけあって、よほどのことでない限り、動じないのではないかと思う。
 イーザック様は静かになった。

「イーザックに叱る人間は、俺くらいだからな。今のは堪えただろう。ゼリヤ、レフィカの着替えを頼む」
「かしこまりました」

 ジグルズ様は着替えを済ませると、ジェレンがいる廊下へ颯爽と出ていった。

「あ、兄上……!」
「弟といえど、ここは俺の屋敷だ。あまり騒いでもらっては困る」
「ここにレフィカと二人きりで。いったいなにを!」
「私は無視ですか?」
「くっ……!」

 ジェレンに言われ、再び、イーザック様は言葉をつまらせた。

「ゼリヤもいる。別に二人きりになったからといって、やましいことはしていない」

 着替えを終わらせた私は、ゼリヤとともに廊下へ向かう。

「イーザック様、おはようございます。朝から私の元へ訪れるなんて、思っていませんでした」
「今まで手紙の返事すら、まともにいただけていなかったのですから当然ですわ」
「手紙は読んでいた! 朝に訪れたのは初めてだが……」

 なお、イーザック様は朝どころか、昼も夜も訪れたことがない。
 もちろん、それを覚えているイーザック様は、気まずい顔をしていた。

「なぜ、部屋にいなかった?」
「王都へ戻る前に地図を仕上げたかったので、広間で作業をしておりました」
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