さようなら、お別れしましょう
 そして、つかまれた手から、イーザック様の緊張が伝わってくる。

「あの……? イーザック様、いったいなにが……?」

 うつむいていた顔を上げると、そこには黒づくめの男が数人立っていた。

「ようやく護衛がいなくなった」
「これで、依頼を果たせる」

 彼らが纏っている空気が、ただのならず者たちとは違い、ピリピリしていた。
 そう感じたのは、私だけでなく、イーザック様も同じだったようで、わずかに後ずさった。
 気づけば私たちの背後に、同じ黒づくめの服装をした男が数人いて、私たちを囲んでいた。

「お前たち、俺の命を狙っているのか。どこの国の者だ!」

 イーザック様が話していても、黒づくめの男たちはイーザック様を見ていない。
 
 ――彼らの狙いは私!?

「そこの女を殺してほしいと依頼された」
「その女を殺せば、依頼は終わる。死にたくないのであれば、ここから立ち去れ」
「レフィカを殺す依頼だと……? お前たちは暗殺者か」

 イーザック様はただのゴロツキではなく、プロの暗殺者だと知り、動揺していた。

「まさか、本気でレフィカを殺すつもりで……? 本物の暗殺者を雇ったのか……?」

 私を暗殺するよう命じた人間――それが誰なのか、イーザック様は知っているようだ。
 イーザック様は大きく目を見開き、現れた暗殺者たちにショックを受け、茫然としていた。

「イーザック様。逃げてください」
「逃げる……だと?」
「あなたはグランツエルデ王国の王です。死んではいけません」
 
 ――生きるために頑張ってきたけれど、私の命はここまで。
 
 最後の最後に私は恋を知り、幸せな日々を過ごせた。
 どうせ死ぬのなら、あなたへの想いを口にしてから死にかった――ジグルズ様。
 
「さようなら、お別れしましょう」
 
 微笑み、イーザック様の体をそっと手で押した。

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