さようなら、お別れしましょう
38 この町で過ごす最後の日(3)
「くそっ! 俺だけ逃げられるか! お前たちを雇った人間の名前を言え!」
イーザック様は逃げずに、暗殺者に立ち向かおうとした。
けれど、手が剣の柄に触れていても鞘から抜けなかった。
ここで剣を抜き、一歩でも動けば、彼らはためらうことなくイーザック様を殺すだろう。
「雇い主の名を答えるわけがない」
「王であっても、お前の命を握り、優位なのはこちらだぞ」
男たちは本物の暗殺者集団のようで、慣れた様子だった。
依頼者はどれだけお金を支払ったのか、彼らは私を本気で殺すつもりだ。
イーザック様の剣の腕前がどれほどのものなのか、私にはわからないけれど、実戦で鍛えられていない限り、暗殺者集団を相手に勝つのは難しい。
「イーザック様。近くにジグルズ様がいます。助けを呼びに行けば、間に合うかもしれません」
イーザック様は迷いながら、私たちが歩いてきた道を振り返る。
その道の向こうに、ジグルズ様たちがいる。
「……すまない、レフィカ」
イーザック様は私より大切なものがある。
私ではなく、王としての自分を選んだ。
イーザック様は私から手を放し、悔しそうな顔で目を逸らした。
「イーザック様。私の命を心配して、王都から迎えに来てくださり、ありがとうございました。あなたが素晴らしい王になり、この国を導いてくださることが、私の望みです」
――イレーネお姉様。これで、私は王妃としての役目を果たすことができましたよね?
あと少しで会えたかもしれない私の大切なお姉様。
生きて幸せに暮らしていてくれるといい――イーザック様が諦めたとわかり、暗殺者たちは剣を抜いた。
剣を抜いた瞬間、そばの一人が悲鳴もなく倒れた。
すぐそばの建物の上から、黒い影が降ってきた。
一瞬の間に、私たちがわかったのは、それだけだ。