さようなら、お別れしましょう
「は……?」
「おい、どうし……た!?」

 私とイーザック様が、『誰』であるか認識するよりも速かった。
 本物の暗殺者たちが戸惑うほどの慣れた戦いぶり――呆けた男の顔を剣の柄で殴り、腹を蹴り上げて昏倒させる。

 ――強い。

 たった一人だといういのに戦い慣れた様子で、周辺にいた暗殺者たちが片付けられていく。
 それは、風のような奇襲。
 暗殺者を地面にひれ伏せさせると、血のついた剣をはらう。

「俺が治める領地に、暗殺者集団を侵入させてしまった。以後、気をつけよう」
「ジグルズ様……」
「兄上!」

 ジグルズ様はそう言いながらも、暗殺者の攻撃を軽々とさばく。 
 ジグルズ様の体は鍛えられ、しなやかな獣のようだ。
 暗殺者の一人が仲間を呼んで、手で合図すると、どこに潜んでいたのか。さらに人数が増えた。
 
「あっさりやられて黙っていられるか!」
「お前たちのうち一人でも殺して帰ってやる!」

 暗殺者集団のプライドにかけ、人を増やす作戦に変更したようだ。

「イーザック。レフィカを連れて逃げろ」
「あ、兄上はどうするんだ!?」
「倒す」

 そう答えたジグルズ様は、返り血を浴び、恐ろしい姿をしていた。
 イーザック様は血を見慣れていないらしく、青ざめた顔をし、その手は震えていた。
 大切に育てられたイーザック様は、戦場へ行ったことがないのだ。
 逆にジグルズ様は動じていない。

「イーザック、気にするな。俺は試されているんだろう」
「試される? いったい誰に試されていると?」
「神だ」
「か、神? 兄上、冗談を言っている場合ではっ……」

 ジグルズ様の琥珀色の目が細められ、暗殺者を三人倒す。

「強すぎる……!」
「噂では聞いていたが……これほどまでとは……」

 暗殺者たちはいったん、ジグルズ様から距離をとる。
 剣の届く範囲に入りたくないのだ。

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