さようなら、お別れしましょう
「イーザック、逃げろ」

 ジグルズ様に言われ、イーザック様が逃げようとした時、後をついてきていたジグルズ様の護衛たちが追いついた。
 
「大変だ! 母さん、暗殺者が!」
「ジグルズ様、ご無事ですか?」

 ハリルとゼリヤの声がして、すぐ近くに護衛たちがいるとわかる。
 まだ遠いけれど、道の向こうに二人の姿が見え、ホッとした。

「よかった! これで、ジグルズ様は……」

 ――助かるわ。

 そう言いかけた私の前に立ち塞がったのは、黒い目と黒髪の女――ベルタだった。

「ベルタ……!」

 その手には短剣が握られていた。

「この機会を逃せば、お前を殺せない! たとえ、私が処刑されようと、目的は果たしてみせる!」

 ベルタがそう言って、短剣を振りかざした。
 暗殺者たちは彼女を援護するため、周りから数人飛び出してきた。
 イーザック様が私の体を突き飛ばす。
 なんとかぎりぎりのところで、剣の刃を避けることができたけれど、突き飛ばされた勢いで地面に転がり、すぐに立てなかった。

「くそっ! レフィカ!」

 イーザック様の声がして、暗殺者を振り仰ぐ。
 暗殺者とベルタの剣の両方が、私の命を狙う!
 ベルタは勝利を確信し、笑いながら私を刺した――はずだった。

「ジグルズ様!?」

 刺されたのは、私ではなくジグルズ様だった。
 ジグルズ様は暗殺者の剣を弾いて、よろめいた隙に容易く倒した。

「あ……兄上っ!」
「イーザック、王がみっともなく騒ぐな。俺は臣下に下った者。俺になにがあっても、お前は堂々としていろ!」
「そんなことを言っても、俺にとって兄上は兄上だ!」

 イーザック様は悲痛な声をあげた。

「急所ははずしたから問題ない」

 そう言いながら、ベルタを一撃で殴り倒す。
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