さようなら、お別れしましょう
 ジグルズ様は暗殺者かベルタの剣か、どちらを受けて致命傷とならないか、瞬時に判断し選んだのだ。
 自分の手に持っていた血に濡れた剣を邪魔そうに捨て、暗殺者の剣を奪って、さらに戦う。
 イーザック様は呆然としたまま、ジグルズ様を見ていた。
 暗殺者たちもジグルズ様を見て、動揺している。
 それは――

 ――ジグルズ様の瞳の色が変わった?

 琥珀色の瞳ではなく、ジグルズ様の瞳は紅玉のような赤色に染まっていた。

「ゼリヤ! お前以外の者をここへ近づけるな!」

 痛みで額に汗をにじませているのに、ジグルズ様はまるで自分の瞳を見られたくないとでも言うように、声を張り上げた。
 ゼリヤはなにかに気付き、他の護衛に指示を出す。

「ここは私が始末する。他の者たちは周辺を封鎖し、一人残らず捕らえて逃がすな!」
 
 そして、ゼリヤだけが駆けつけて、すごい速さで暗殺者を倒す。
 ジグルズ様は暗殺者よりも速く動き、あっという間に片付けた。
 ゼリヤが駆けつけ、布で血を止める。

「ジグルズ様。後は私たち護衛に任せ、動かないでください。死んでしまいます」
「心配するな。急所ははずした。暗殺者の一撃を受けるより、素人のほうがマシだからな」

 ジグルズ様は心配させないように、言ったのだと思うけれど、光源が花火だけでもわかる。
 ジグルズ様の顔色が悪く、赤い血が滴っていることが……
 
「レフィカ、無事か? 怪我はないか?」 
「私は無事です。無事ですけど……ジグルズ様が、ジグルズ様が……」

 思わず、子供のように泣いてしまった。

「死なないから安心しろ」

 さっき私に触れなかった指が、私の頬に触れる。
 イーザック様は止めず、私とジグルズ様を黙って見ていた。
 ジグルズ様の指がゆっくり滑り落ち、私の目の前で倒れた。
 赤い血が流れて止まらない。
 ジグルズ様の命が消えていく――

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