さようなら、お別れしましょう
「恋仲の女性がいるなら、結婚をお断りするべきでしたわ!」
「ジェレン。王族の結婚は政略結婚がほとんどですよ」

 ドーヴハルク王国の王女は、全員が政略結婚。
 結婚相手を選べた王女はいない。

 ――私より前に嫁いだ王女は、どこへ嫁いだの? 父が意味もなく嫁がせるわけないわ。

 私と同じように、心臓に【契約】を刻まれた王女たち。
 私が異母姉妹たちの嫁ぎ先を知らないのは、『嫁ぎ先を教えてはいけない』と、後宮のしきたりで決められていたからだ。
 それは、嫁いだ王女の死を知られないためである。
 誰に聞いても、『幸せに暮らしておいでですよ』と、決まった答えしか返ってこない。 

「ねえ、ジェレン。お父様はイーザック様が結婚を断れないように、王女たちを嫁がせたのではなくて?」
 
 私の問いかけに、ジェレンは目に見えて動揺していた。
 グランツエルデ王国をぐるりと囲むようにして、父は国々と同盟を結び、この国を孤立させた。
 周辺の国々に、味方がいない状態で、イーザック様は結婚を申し込まれたのである。
 この政略結婚は、父の脅しである。

『結婚しないのであれば、周囲の国々と共にグランツエルデ王国に攻め込むぞ』

 そんな意図を感じる。

 ――これは、数年で考えたことではないわね。

 徐々にグランツエルデ王国を孤立するよう仕向けた。
 父の狙い通り、長年続いたの両国の争いは、この同盟によって終わった。

「私の結婚は、お父様の策略の一つだったんですね。それでは、結婚を断るのは難しいでしょう」
「それはそうですけれど……。レフィカ様はものわかりが良すぎですわ」

 ――そうでなかったら、生きてこれなかった。

 ジェレンの言葉に苦笑した。
 不満があっても、黙っていなければ、異母姉妹や妃たちから仕返しをされる。 
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