さようなら、お別れしましょう
41 姉を知る人(2)
「死にかけたくせに起き上がれるとは、たいした精神力だ」
「うるさい。放っておいたら、お前がどんどん俺をこきおろすだろうが!」
「ほら、ジグルズは大丈夫だっただろう? 元気なものだ」
はははっとカリム様は笑ったけど、私は笑えなかった。
目覚めたジグルズ様を見て、泣いてしまった。
「なかなかジグルズ様が目覚めなくて、私は心配でした……」
「……レフィカ。心配かけて悪かった」
「いえ、私が一緒にいなければよかったと思って、後悔していました」
「俺は後悔していない」
ジグルズ様はいつものように明るい笑みを浮かべた。
うなされるほどの悪夢を見ていただろうに、ジグルズ様は弱音一つ吐かず、私たちを安心させるために笑う。
「だが、王の力について他言しないでほしい。王はイーザックだ。この国の王の力は、俺で終わりにする」
――犠牲の終わり。
ジグルズ様の強い意思を感じた。
「新しい犠牲を出さないために、ジグルズ様は王位を捨てたんですね」
「そうだ。俺は最愛の人を殺したくない。殺してくれと乞われるのもごめんだ」
苦々しい表情で言ったジグルズ様は、どこか遠くを見ていた。
ジグルズ様のお母様がそうだったのか、心の痛みをこらえるように拳を握りしめた。
「リュザール王家はジグルズの決定を歓迎する。我らもまた王の力は必要ないものとして考えている」
カリム様は厳かに言った。
王の力を捨てる決断は、簡単にできるものではない。
一度、力を失えば、王の力は戻ることがないのだ。
それでも、リュザール王家もジグルズ様も、大切な人を殺さない選択をした。
――お父様もそんな考えを持ってくれていたら、どれだけ救われたか……
「カリム、イレーネ王女のことをレフィカに話したのか?」
「まだだ」
カリム様は私を見て、はっきり言った。
「イレーネは生きている」
「……そう……そうですか! イレーネお姉様はやっぱり生きていらっしゃったんですね!」
――イレーネお姉様が生きている!
イレーネお姉様が生きていたことが嬉しくて、涙がこぼれた。
「レフィカ、よかったな」
「はい!」