さようなら、お別れしましょう
「カリムと俺は敵同士だったしな」

 昔を思い出したのか、ジグルズ様は懐かしそうに目を細めた。

「戦場でジグルズに追い詰められ、殺されるかと思ったら、酒を飲もうと誘われた」
「話のわかる人間相手に、わざわざ殺しあう必要はないだろう? 話し合いで解決できる相手には無駄な血を流さず、話し合いで解決するべきだ」
「父とジグルズを引き合わせ、リュザール王国とグランツエルデ王国は、ジグルズを通じて友好関係を築いた」
「どっちみち、俺はカリムを殺せなかった。リュザール王家は、家族の命を大事にする。カリムを殺していたら、友好関係は築けなかっただろう」

 ――グランツエルデ王国とリュザール王国は敵同士だったということ?

 そういえば、ゼリヤがジグルズ様が出会ったのは、戦場だと言っていたような気がする。
 王の力を捨てない国は、リュザール王国にとって、好ましくない国として認識されていたようだ。

「家族同士の繋がりが強いんですね」
「そうだ。それで、イレーネのことに関しても、家族全員でなんとかしようという話になった」
「家族全員でなんとかする……素敵ですね!」

 イレーネお姉様はとても嬉しかったに違いない。
 私はイレーネお姉様が大切にされて、自分のことのように嬉しかった。
 カリム様が微笑む。

「まあ、イレーネの【契約】を無効にするのは、それほど難しくなかった」
「そうだったんですか!?」
「父は五つ目の【契約】に保険をかけた。方法が見つからなかった場合、逆に【契約】を利用し、王女を自由にしようと決めた」
「【契約】を利用する……?」

【契約】を無効にできたお姉様には、五つ目に特別な内容が加えられたということだ。
 私とイレーネお姉様は、まったく状況が異なる。
 最初から救うために妻として迎えられたイレーネお姉様。
 同盟目的の政略結婚で嫁いだ私。
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