さようなら、お別れしましょう
 興味のない人間を救おうと思うだろうか。
 イーザック様がリュザール王と同じような【契約】した可能性は低い。

「……イレーネお姉様の五つ目の【契約】内容を聞いてもよろしいですか?」
「ああ。それは……」

 カリム様が答えようとした時、部屋の扉を叩く音がした。

「レフィカ様。こちらにいらっしゃいますか?」

 その声はジェレンだった。
 イレーネお姉様は死んだことになっている。
 ジェレンにイレーネお姉様が生きていることを知られるわけにはいかない。
 カリム様は口を閉じ、私は平静を装った。

「ジェレン。ここにいるわ。ジグルズ様が目覚めたの。中へ入って」
「それは本当ですか!?」

 バンッと勢いよく扉が開き、ジェレンは興奮のあまり、早口で言った。

「本当にジグルズ様がお目覚めになったのですね! 皆様、喜びますわ。全員に知らせましょう!」
「待て。なにかレフィカに伝えにきたのだろう?」

 ジグルズ様が止めると、ジェレンは我に返った。
 
「も、申し訳ございません……。そうでした。先ほど、イーザック様が王都へ戻ると言って、お一人で出発されました」
「イーザック様が一人で戻られた?」

 一緒に戻る予定にしていたはずが、イーザック様は私を置いていった。
 あんな強く私に戻ろうと言っていたのにおかしい。
 そういえば、お屋敷に戻ってから、一言もイーザック様と話していない気がする。

「イーザックは犯人を捕らえ、処罰するつもりだろう」

 この事件の首謀者として、ベルタは捕らえられた。
 すでに彼女は罪人として王都へ送られている。
 だから、ジグルズ様が犯人と言ったのはベルタのことではない。
 私の命を狙ったのはメリアだと、誰もがわかっていた。 
 ベルタがメリアをどれだけかばっても、絶対に疑いは晴れない。
 なぜなら、侍女の給料で、大勢の暗殺者を雇えるわけがないからである。
 イーザック様であっても、かばいようがないくらい犯人は明らかだった――

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