さようなら、お別れしましょう
42 誰かを愛するという気持ち ※イーザック
――俺は王だから、死ねないと思ってしまった。
暗殺者たちに襲われ、生死を左右する場面で、俺は王である自分を優先した。
兄上は迷わずレフィカを守り、彼女の信頼はすべて兄上のものになった。
レフィカは兄上を愛するだろう。
そして、あの一瞬で、兄上のレフィカへの気持ちがわかった。
「……だから、どうだというのだ」
レフィカは俺の妻で、兄上の恋は叶わない。
そして、俺にはレフィカだけでなく、メリアがいる。
だが、メリアは俺に嘘をついた裏切り者だ。
――側妃でいいと言ったのはメリアだ! なぜ、俺に嘘をつき、裏切るような真似をした!
メリアとベルタの話を立ち聞きし、レフィカの命を狙っていると知った。
だが、俺は信じたくなかった。
俺に逆らったことがない優しいメリア。
聞き間違えだと思いたかった。
真偽を確かめるため、俺は夜のうちに単身、シャルク・ホジャへ向かった。
結果、雇われた暗殺者たちが現れ、兄上はレフィカをかばい、瀕死の状態だ。
――メリアが俺にどう言い訳しようと無駄だ。
暗殺者たちとベルタが計画を実行した場に居合わせた。
俺自身が証人だ。
「陛下、どうぞ」
馬車の扉を開けた御者が、俺が降りるのを頭を下げて待っていた。
扉を開けたまま、美しい姿勢を崩さない。
俺の前にあるのは、華やかで歴史を感じさせるグランツエルデ王宮。
そして、俺は王だ。
――メリアの計画をわかっていながら、俺は守れなかった。レフィカも兄上も。
「俺は王にふわさしいのか……?」
「陛下ーっ!」