さようなら、お別れしましょう
「ベルタは盗んだ品を元手に、暗殺者を雇った」

 騎士たちが動こうとして、俺は手で制した。

「まあ! わたくしの宝石を盗んだ犯人をイーザック様は捕まえてくださったのですね!」

 あくまでメリアは罪を認める気はないようだ。
 ならば――

「ベルタは兄上を刺し、レフィカは生きている」
「なっ……!」

 目的を達成できていないと知ったメリアは動揺を隠せなかった。
 
 ――やはり、メリアの狙いはレフィカか。

「俺はレフィカを正妃として王宮へ呼び戻す」
「お、お待ちください。イーザック様! わたくしだけを愛しているとおっしゃったのは、嘘でしたの!?」
「俺は人から愛されるばかりで、誰かを愛するという感情をわかっていなかった」

 俺は両親から甘やかされ、愛情は与えられて当たり前だった。
 兄上へのあてつけだったかもしれないが、父上の愛情も俺だけのものだったのだ。
 人に愛情を乞うことがないまま、俺は育った。

「俺は初めて愛することを知った」

 嫉妬と戸惑い、どれだけ自分が愛しても愛されない苦しみも。
 メリアは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 ――ここまで言えば、メリアは必ず動く。

 レフィカが王宮へ戻ると聞いて、メリアがなにもせずに黙っているとは思えない。
 メリアがベルタをかばわなかったことが、なによりの証拠だ。
 再び、メリアは自分の手を汚さず、ベルタにやらせようとするだろう。
 ベルタと必ず接触するはずだ。

「ベルタは地下牢に放り込む。処刑は免れない」

 それ以上、なにも言わず、騎士たちとともに、メリアの元から去った。
 そして、待つ。
 メリアが動く時を。

< 194 / 198 >

この作品をシェア

pagetop