さようなら、お別れしましょう
43 協力者
ジグルズ様が私をかばい、刺された日から、数週間経った。
あれから、イーザック様は私になにも言ってこないし、会いに来ることもない。
ただ、ジグルズ様のために、医師や薬を送ってきただけで、特に変化のない毎日だ。
――もしかして、イーザック様は私の気持ちに気づいた?
『妻の不義』は行動しなければ、【契約】に触れないとわかっていても、他にも【契約】はある。
『王女を正妃として迎える』
『王女の逃亡を禁ずる』
『領土を奪わない』
五つ目はわからないけれど、気に入らなければ、いつでもイーザック様は私を殺すことができる。
私はあとどれくらいジグルズ様のそばにいられるのだろう。
心臓がある左胸に触れた。
今まで、死がこんなに怖いと感じたことがなかった。
――死が怖いのに、嬉しくて悲しい。
もし、私が死んだら、ジグルズ様だけでなくシャルク・ホジャの人々も悲しんでくれる。
後宮の片隅で暮らし、イレーネお姉様以外、相手にされなかった王女が、誰かの心の中に存在している。
それだけで、奇跡だ。
でも、私は死にたくない。
ジグルズ様、ゼリヤやハリル、お屋敷の人たち、シャルク・ホジャの人々――もっとみんなと一緒にいたい。
「レフィカ。どうした? そんな怖い顔をしなくても、俺はもう歩けるし、剣も使える」
明るい陽光が降り注ぐ中庭から、ジグルズ様が私を見て微笑んだ。
回廊側の日陰から、ジグルズが無理をしないよう見張っていた私は、ハッと我に返った。
「ち、違います! にらんでません!」
「そうか? ならいいが、眉間にシワがよっていたぞ」
ジグルズ様はお医者様もびっくりの驚異の回復力で、回復して動けるようになった。
今日は天気もよく、屋敷の中庭でリハビリを兼ね、ハリルに剣を教えているところだ。
ゼリヤは他国へ行っていて、ハリルにとっては寂しい日々が続いていたけれど、ジグルズ様が元気になったからか、とても明るい。
「ジグルズ様! 次は弓矢を使ってみたいです!」