さようなら、お別れしましょう
「わかった。子供用の弓矢を作らせよう」
「やったぁ!」

 ハリルは『ばんざーい』と手をあげて飛び跳ね、大喜びした。

「ハリルはどんどん強くなりますね」
「うん。おれ、ジグルズ様や母さんみたいに強い人になるんだ!」
「そうだな。ハリル、午後の剣の練習はこれで終わりだ。ちゃんと文字の勉強もするんだぞ」
「う……! わかりました……」

 ゼリヤは旅立つ前に、ハリルに課題を出している。
 ハリルが剣ばかりやりたがるとわかっているからだ。
 しぶしぶとハリルは練習用の剣を片付けた。
 そして、ジグルズ様だけになり、剣を振るおうとしたのを見て、私が止めた。

「ジグルズ様、いけません。ちゃんと休憩してください。医師が休憩をとるように言っていました」
「見張られているな」
「みんなから頼まれているんです。ジグルズ様は絶対にじっとしていないから、私に見ていてほしいって」
 
 ハリルだけでなく、ジグルズ様の行動もお見通しというわけである。
 ジグルズ様は苦笑し、諦めて剣を片付けた。

「……わかった。休憩しよう」
「ジェレンに頼んで、中庭にお茶と未処理の書類を用意してあります」
「気が利くな」
「公爵補佐官ですから」

 そう言って微笑むと、ジグルズ様は私の手を取った。

「では、公爵補佐官殿。一緒に午後のお茶と仕事につきあってもらおうか?」
「お手伝いいたします」

 私はジグルズ様が起き上がれない間、書類を運んだり、代筆をするなどの仕事を担当した。
 有能な配下たちは全員、それぞれ任務を与えられ、領地内に振りわけられた。
 そのため、私しかいない。
 なので、午前は町役場、午後はお屋敷に戻り、ジグルズ様のお手伝い――そんな毎日を送っていた。
 私とジグルズ様は並んで庭を歩く。
 公爵家の庭園の花は色鮮やかな色が多い。
 南の方の花が植えられ、華やかで明るく見える。 
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