さようなら、お別れしましょう
 ジェレンは紺色のドレスに身をつつみ、お茶とお菓子がのったワゴンを横に置く。
 そのワゴンの銀のトレイに、一通の手紙がのせられていた。

「イーザック様から、ジグルズ様へ手紙が届いております。ジグルズ様にお渡しするよう家令に頼まれました」

 ――イーザック様からの手紙!? まさか、私に王宮へ戻れという催促では……?

 ジェレンが銀のトレイに手紙をのせて、差し出す。
 ジグルズ様は手紙の封を開け、中身を確認する。
 手紙を読み、それを私へ見せた。
 そこには『レフィカのリュザール王国行きを許可する』と書かれてあった。

「ジグルズ様がイーザック様に頼んでくれたんですか?」
「そうだ。レフィカ。リュザール王国へ行き、イレーネ王女に会おう」

 密かに、ジグルズ様は私の【契約】を無効にするため、動いてくれていたのだ。

「リュザール王家は【契約】を無効にする方法を調べていた。カリムに話を聞くため呼んだが、ほとんど話せる時間がなかったからな」

 イーザック様が戻ってすぐ、王宮から医師たちがやってきて、ジグルズ様の傷が塞がるまで、絶対安静の面会謝絶を言い渡されたのだ。
 そのため、カリム様はジグルズ様に会えなくなり、早々に国へ戻られた。

「リュザール王国には、なにか有効な方法があるかもしれない。それに、カリムにもお礼を言いたい」
「そうですね」

 リュザール王国には【契約】から逃れ、イレーネお姉様が元気に暮らしていると、カリム様から聞いている。

 ――リュザール王国へ行けば、イレーネお姉様に会える!

 ずっと会いたいと思っていたイレーネお姉様。
 表向きでは、イレーネお姉様が【契約】に逆らい、亡くなったことになっているから、大きな声では言えない。
 私は一人静かに、喜びを噛み締め、リュザール王国がある南の空を眺めた。

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