さようなら、お別れしましょう
 どうやら、リュザール王家は国民に『若い騎士と逃げた』ではなく、『病気で亡くなった』と発表したらしい。
  
「遠いところから、よく来てくれたね。ほら、これはサービスだよ!」

 ナイフで手際よくフルーツをむき、私にスッと差し出した。

「いただいてもよろしいのですか?」
「もちろん! この国を好きになってほしいからね。いい国だよ」
「ありがとうございます」

 誰もが明るく、元気が良くて楽しそうだ。

「リュザール国民はおおらかな性格なんだ」
「びっくりしました」
「ジグルズ様、レフィカ様。そろそろ馬車へ」

 他国に行っていたゼリヤが戻り、護衛としてついてきた。
 少数の護衛でと、ジグルズ様は言ったけれど、それは叶わなかった。
 私たちが乗った馬車の周りには、ゼリヤが選んだ腕利きの護衛たちがいて、さらにリュザール王家が追加で護衛を寄越してきた。
 ジグルズ様もさすがに、刺されたばかりなので『減らしてくれ』とは言えなかったようである。
 しっかり守られた馬車は、市場を出て王宮へ向かう。
 道の両側が砂漠という光景に、思わず身を乗り出した。

「ジグルズ様! あれはラクダですか?」
「そうだ。ラクダに乗った商隊だな」
「あれが……ラクダ……」

 ラクダが見れるかしらと、イレーネお姉様と話していた頃が懐かしく感じた。
 あの頃の私に、『あなたはラクダを見るわよ』と言っても信じないと思う。

「どうした? なにか面白いことがあったか?」

 私がラクダを見て笑っていたからか、ジグルズ様も同じように窓の外を眺めた。
 
「私、ジグルズ様と出会い、こうして過ごせたことがよかったと思っています。たくさん珍しいものを見れて、こんな遠くまで来たなんて夢みたいです」
「これからも過ごす。そのためにここへ来た」

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