さようなら、お別れしましょう
 複雑な心境だったけど、ラクダには乗りたかったので黙っていた。
 きっと私だけでなく、イレーネお姉様だってラクダに乗ったに違いない。

「ジグルズ、レフィカ。ようこそ、リュザール王国へ」
「カリム様!」
「カリムが出迎え役か」
「俺意外、この出迎えにふさわしい王子はいないだろう」

 ジグルズ様はカリム様にお礼を言った。

「リュザール王家の助けに感謝する」
「ジグルズ、命拾いしたな。俺がいなかったら、お前は危なかったぞ。少しはあの弟に剣を教えろ」
「俺は王にならないと決めた代わりに、イーザックを守るのが、俺の役目だと思っている」
「弟を甘やかすな。ジグルズの命は、お前が考えているほど安くない。もっと自分の身を大切にしろ」

 少しだけカリム様は怒っているように見えた。
 ジグルズ様が倒れた時、カリム様は平気なように見えたけれど、本当は心配していたのだ。

「悪かった」
「まったくだ。父上もお前がいるから、グランツエルデ王国を信用している。お前の父親がなんと言っていたが知らないが、ジグルズはリュザール王家にとって大切な存在で友人だ。それを忘れるな」

 ジグルズ様は驚いた顔をして、それから笑った。

「死ぬつもりはないのだが、これからは気をつけよう」

 カリム様はうなずいた。
 ジグルズ様は父親から死を望まれていたからか、無意識に自分の命を軽く考えてしまっていたようだ。
 ゼリヤは遠くからカリム様に一礼した。
 カリム様はゼリヤに目だけで挨拶をする。

 ――ジグルズ様とゼリヤの出会いは戦場だったと聞いたわ。

 リュザール王国がゼリヤの故郷だとすると、元々、グランツエルデ王国とリュザール王国は、友好国ではなかったということだ。
 ジグルズ様が両国を繋いでいる。
 そして、私の心臓に刻まれた【契約】が、他国からの侵略を防いでいる。
 
< 202 / 203 >

この作品をシェア

pagetop