さようなら、お別れしましょう
――私の【契約】が消えたら、お父様はどうするの?
グランツエルデ王国へ攻めこむつもりだろうか。
さすがにリュザール王国は遠くて、お父様が戦うには難しい相手だ。
イレーネお姉様の生死を疑ったとしても確かめるために、人をやるのも大変な場所である。
砂漠に囲まれ、町と町を繋ぐ整備された広い道は一本だけ。
そう思うと、お父様がイレーネお姉様の生死をわざわざ確かめずに、リュザール王家から聞いて済ませたのは、調べたところで、ドーヴハルク王国の利にならないと判断したからだろう。
――でも、私の場合は?
グランツエルデ王家に嫁ぐと決まった時のお父様の喜びようが目に浮かぶ。
私がお姉様のように、『騎士と逃げて死んだ』と発表しても人をやり、徹底的に調べるだろう。
グランツエルデとドーヴハルクは隣国同士。
私が生きていると知ったら、お父様は私を――
「レフィカ?」
「はっ、はい!」
「王宮に入ったら、俺は国王に挨拶をするが、レフィカはあちらの入り口から後宮へ行くんだ」
後宮――それは懐かしい響きだった。
「……イレーネお姉様がいるんですね」
「ああ。そうだ」
ジグルズ様は私に微笑んだ。
「今は【契約】のことよりも再会を楽しめ。難しい話は俺が聞く」
「はい」
イレーネお姉様の話を聞いて、私が絶望しないように、ジグルズ様は言ってくれたのだ。
私とイレーネお姉様の【契約】は違うだろうと、カリム様は言った。
リュザール王国の国王陛下は、嫁いでくる王女を救うため、五つ目の【契約】を変えたという。
「ゼリヤ、レフィカの護衛を。他の者は俺についてこい」
ジグルズ様が宮廷へ向かい、ゼリヤが私のそばに立つ。
「レフィカ様、安心してください。私がしっかり護衛します。リュザール王国は故郷ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」
「ゼリヤ、ありがとう。心強いわ」
初めて訪れた国。
ドーヴハルク王国とは、景色も雰囲気もまったく違う国に嫁いだ時、イレーネお姉様はどう思ったのだろう。
後宮の回廊を女官が先導し、私とゼリヤを案内する。
中庭の噴水には女性が集まり、美しい柄のショールに身を包んでいた。
女性たちはおしゃべりを止め、その中の一人がこちらへ歩いてくる。
顔を布で隠し、見えないけれど、私にはわかる。
「イレーネお姉様……!」
イレーネお姉様が私に別れを告げ、ドーヴハルク王国を去ってから、約二年。
私は異国の地で、イレーネお姉様と再会を果たした。
グランツエルデ王国へ攻めこむつもりだろうか。
さすがにリュザール王国は遠くて、お父様が戦うには難しい相手だ。
イレーネお姉様の生死を疑ったとしても確かめるために、人をやるのも大変な場所である。
砂漠に囲まれ、町と町を繋ぐ整備された広い道は一本だけ。
そう思うと、お父様がイレーネお姉様の生死をわざわざ確かめずに、リュザール王家から聞いて済ませたのは、調べたところで、ドーヴハルク王国の利にならないと判断したからだろう。
――でも、私の場合は?
グランツエルデ王家に嫁ぐと決まった時のお父様の喜びようが目に浮かぶ。
私がお姉様のように、『騎士と逃げて死んだ』と発表しても人をやり、徹底的に調べるだろう。
グランツエルデとドーヴハルクは隣国同士。
私が生きていると知ったら、お父様は私を――
「レフィカ?」
「はっ、はい!」
「王宮に入ったら、俺は国王に挨拶をするが、レフィカはあちらの入り口から後宮へ行くんだ」
後宮――それは懐かしい響きだった。
「……イレーネお姉様がいるんですね」
「ああ。そうだ」
ジグルズ様は私に微笑んだ。
「今は【契約】のことよりも再会を楽しめ。難しい話は俺が聞く」
「はい」
イレーネお姉様の話を聞いて、私が絶望しないように、ジグルズ様は言ってくれたのだ。
私とイレーネお姉様の【契約】は違うだろうと、カリム様は言った。
リュザール王国の国王陛下は、嫁いでくる王女を救うため、五つ目の【契約】を変えたという。
「ゼリヤ、レフィカの護衛を。他の者は俺についてこい」
ジグルズ様が宮廷へ向かい、ゼリヤが私のそばに立つ。
「レフィカ様、安心してください。私がしっかり護衛します。リュザール王国は故郷ですから、なにがあっても大丈夫ですよ」
「ゼリヤ、ありがとう。心強いわ」
初めて訪れた国。
ドーヴハルク王国とは、景色も雰囲気もまったく違う国に嫁いだ時、イレーネお姉様はどう思ったのだろう。
後宮の回廊を女官が先導し、私とゼリヤを案内する。
中庭の噴水には女性が集まり、美しい柄のショールに身を包んでいた。
女性たちはおしゃべりを止め、その中の一人がこちらへ歩いてくる。
顔を布で隠し、見えないけれど、私にはわかる。
「イレーネお姉様……!」
イレーネお姉様が私に別れを告げ、ドーヴハルク王国を去ってから、約二年。
私は異国の地で、イレーネお姉様と再会を果たした。


