さようなら、お別れしましょう
 イレーネお姉様が私の顔を見て、うつむいた時から、そんな気がしていた。
 私に申し訳ないという気持ち――でも、私とイレーネお姉様は違う場所へ嫁いだ。  
 それに、私はグランツエルデ王国に嫁いだことを後悔したことは一度もない。
 なぜなら、私はドーヴハルク王国でいた時よりも自由で、多くの人に出会えたからだ。

「イレーネお姉様と私の【契約】は違うと、カリム様から聞いていました」

 イレーネお姉様は私の手を強く握りしめた。

「私はまだ【契約】を無効にする方法を探しているの。必ず、見つけてみせるわ」

 私のため――そして、未来に生まれてくるであろうドーヴハルク王国の王女たちを助けたいと、イレーネお姉様は考えている。

 ――イレーネお姉様は変わらない。私の大好きなイレーネお姉様のまま。

 絶望したままで終わらない。

「私はシャルク・ホジャへ行き、ジグルズ様に出会い、大切な人がたくさんできました。だから、幸せです。私のことより、イレーネお姉様が幸せになることを考えてください」
「レフィカ……」

 イレーネお姉様は【契約】が消えても苦しんでいた。
 自分だけが幸せになっていいのだろうかと――どこまでも、【契約】は私たちを苦しめる。
 リュザール王は五つ目の【契約】を使って、イレーネお姉様を自由にするのではなく、他の方法で【契約】を無効にしたいと考えていたのではないだろうか。
【契約】の力を使って自由にできても、王の力に勝利したとは言えない。
 でも、お父様はリュザール王家がなにをしようと、意に介していない。
 なぜなら、お父様の本当の狙いは――
 
「イレーネお姉様、お父様の狙いはグランツエルデ王国です」
「ええ……。だから、私はあなたを心配していたの」

 父の狙いは最初から、遠いリュザール王国との同盟が目的ではない。
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