さようなら、お別れしましょう
「ベルタを逃がして、今度こそレフィカ様の命を奪ってやるわ」

 カビ臭く湿気の多い地下牢は、少しの時間いただけでも気分が悪くなりそうだった。
 ベルタがどこにいるか、すぐにわかった。
 女性の声が聞こえた。

「……ない……殺されたくない……」

 捕らえられたベルタは、牢屋の中でガタガタ震えている。

「ベルタ、大丈夫よ。助けにきてあげたわ」
「メリア様……!?」

 わたくしの姿に気づいたベルタが、鉄格子をつかみ、声を張り上げた。

「メリア様、申し訳ございません。私はっ……」
「ここから出してあげる。その代わり、次こそレフィカ様を殺してくるのよ」
「次こそ……?」
 
 鉄格子を握るベルタの手が震えていた。

「レフィカ様さえいなければ、わたくしは正妃になれるの。そうなったら、ベルタ。あなたは王妃付の侍女よ」
「メリア様、もうおやめください……。次はございません」
「やめる? やめるわけないでしょう! レフィカ様を殺さなきゃ、イーザック様はわたくしだけを愛してくれないわ!」

 大声でベルタに言った瞬間、地下牢の奥の暗闇から、こちらへ近づく足音がした。

「誰? 兵士かしら?」

 見張りの兵士だろうと思っていた。
 けれど、それは――

「イーザック様……」

 琥珀色の瞳が、わたくしを見ていた。
 怒りと失望、悲しみが入り交じった目――ベルタは床にうずくまり、泣いていた。

「メリア、お前を信じていたかった」
「イーザック様……シャルク・ホジャへ向かったのでは……?」

 イーザック様の周りには、騎士たちが控え、わたくしに近寄らせようともしない。
 王を守る騎士たちが、剣を鞘から抜き放ち、こちらに剣を向けている。

「俺が王宮にいないとわかれば、なにかするだろうと思っていた」
「わたくしを誘き出すため、わざと見張りの兵士を減らしたのですね……」
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