さようなら、お別れしましょう
「そうだ。お前がベルタと共謀したという証拠を押さえるためにな」
 
 このままだと、わたくしは処刑されてしまう。

 ――そうだわ。きっとベルタがわたくしを助けてくれる!
 
 いつも、わたくしを助けてくれたベルタがここにいる。
 今回もきっと、わたくしをかばうはず。
 振り返ると、ベルタは責めるような目で、わたくしを見ていた。

「ベルタ? その目はなに? どうして、そんな目でわたくしを見るの?」
「メリア様のために、命を捨てる覚悟で、私はレフィカ様を殺そうとしました。それなのに、ふたたび私に死んでこいと命じるのですか?」

 ベルタが泣いていたのは、死への恐怖ではなく、信じていたわたくしへの失望からだった。

「ベルタがしつこくお前をかばっていたから、俺と一つ賭けをした」
「賭け? どんな賭けですの?」
「もし、メリアがベルタを大切に思っているなら、ここから逃がすだろうと」
 
 イーザック様はベルタに哀れみの目を向けた。

「だが、そうでないなら、もう一度、ベルタを利用し、レフィカを始末させようとする。ベルタは前者に賭け、俺は後者に賭けた」
「それが賭けですの?」
「ああ。結果、俺の勝ちだったというわけだ」

 ――イーザック様はわたくしを信じてくださらなかった。

 イーザック様のわたくしへの愛はもう消えていたのだ。
 ベルタだけが、わたくしを信じていた。
 貧しく卑しい生まれと、蔑んだベルタだけが、わたくしの味方だったのだ。
 
「メリア、さよならだ」

 騎士たちが一斉に動き、わたくしをすばやく捕らえた。

「イーザック様……! あなたが悪いのですわ。わたくしを心から愛してくだされば、こんなことをしなくて済みました!」
「レフィカとメリアの決定的な違いがある」

 イーザック様はわたくしをまっすぐ見ていた。

「愛されなくても、レフィカは誰も憎んでいなかった。だが、俺もメリアと同じだ。愛されないことが憎い。憎いが、俺は……」

 ここから先の言葉は、聞きたくなかった。
 それを言われたら、本当のお別れが待っている。

「やめて、言わないで!」
「俺はレフィカを愛している」

 たった一言が、わたくしとイーザック様の関係を終わらせた。
 そして、二度とわたくしが、イーザック様に愛されることはないと、悟ったのだった。
< 213 / 249 >

この作品をシェア

pagetop