さようなら、お別れしましょう
 リュザール王の娘たちが食事を終えて、後宮から出てきた。
 昼間と違って、砂漠の夜は冷えるため、厚手のショールを羽織っていた。
 王女や王子、王子の妻という身内だけの場だからか、顔は隠していなかった。
 
「ねぇ、お父様。レフィカ様を助けてあげられないかしら?」
「イレーネだってうまくいったのよ。レフィカ様だってなんとかしてあげたいわ!」
「そーよ、そーよ! なんとかしましょうよ!」

 王女たちはこぞって、リュザール王に訴えた。
 王であっても遠慮がなく、好き放題に発言していて、とてもびっくりした。
 たとえ、寵愛を受けた妃であっても、父に気安く話しかけられる人間は誰もいなかったからだ。

「うるさいだろう? だから、晩餐会に呼ばなかったのだ……」
「俺は賑やかでいいと思うが」
「ジグルズ、なにを言う。お前からも注意してくれ。お前が言ったほうが、言うことをきくかもしれん」

 リュザール王は苦笑し、鎖付きの眼鏡を指であげた。
 灰色の髪と髭、細い体をしているリュザール王は、娘たちのほうが強そうに見えるくらいだ。
 でも、けして弱々しいわけではない。
 目を見れば鋭く、強い意思を持っているのだとわかる。
 そして、大勢の家族が控え、周りからの圧がすごい。

「お父様、ひっどーい! 私たちが頑張って調べてるのにっ!」
「そうよぉ! 遺跡を調べたり、他国の王子をたぶらかして書庫を漁ったり、古い文献を手に入れるのは大変なんだからっ!」
「ジグルズ様は手強くて、無理だったけど、親切に古い文献を貸していただけて助かったわ」

 ――た、た、たぶらかす? 今、とんでもないことを聞いたような気がする。
 
 王女たちは腰が細くて身長が高く、妖艶な雰囲気を漂わせている。
 全員が目鼻立ちがはっきりした美人ばかりだ。
 たしかに魅力的で、男性なら誘惑されかねない……
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