さようなら、お別れしましょう
 侍女たちは別居後も、妻としてのアピールをするべきだと言う。
 ドーヴハルク王国の後宮では、王の寵愛を受けなかった妃の暮らしは貧しく、寂しいものだった。
 機を織ったり、掃除をしたり――他の妃の侍女にされた女性もいる。
 だから、ジェレンたちの言っていることも、きっと間違いではない。
 間違いではなかったけど、私はそれを選ばない。

「イーザック様はずっとメリアを愛していたのです。その想いを邪魔してまで、愛されようとは思っていません」

 後宮で、父の寵愛を競った女同士の争いをいやというほど目にしてきた。
 私の母が嫌がらせを受け、泣いている姿を何度も見た。

「私は二人の幸せを願います」
「レフィカ様……」
「レフィカ様の幸せはどうなるのですか……?」

 微笑んだ私に対し、侍女たちは泣いていた。
 私の将来を心配してくれるなんて、彼女たちはとてもいい人たちだと思う。

「私は結婚したら、もっと自由になれるはずだと信じてました」

 結婚前の王女は後宮から出ることができなかった。
 そして、結婚してからは、王宮から夫の許可なく出られない。
 
「今までの私は不自由で、旅行にも行ったことがありません。でも、これからは違います」
「レフィカ様は自由になりたかったのですか?」
「ええ。そうです。別居していただけるなんて幸運でした。もしかしたら、海や砂漠、ラクダを見れるかもしれません」
「それはまあ、私もまだ見たことありませんけど……」

 私はイーザック様の別居宣言によって、ほんの少しの自由を得た。

「わかってます。私の自由はかりそめの自由だってこと」

【契約】から逃れられず、いつ死んでもおかしくない身。
 でも、私はこの運命を変えたい。
 恐ろしい父に逆らってでも、死の運命を私は変える――バンッと扉が開き、思考を中断させられた。

「え……? なにかしら?」
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