さようなら、お別れしましょう
「私たち王女は、王の力の犠牲になって死ぬのが当たり前でした。でも、それを終わりにしたいと考える王子が、いつかきっと現れる。ドーヴハルク王国にも」

 数多の星が輝く下で、私はあなたに感謝を伝える。
 王の力の犠牲になった人たちに代わり、犠牲を終わりにしてくれたあなたへ。

「ジグルズ様、ありがとうございます。あなたの存在は、私たちにとって希望となるでしょう」

 命と引き換えに、ジグルズ様への想いを伝えたいと思う日が来るかもしれない。 
 
 ――私はあなたを尊敬し、愛しています。

 いつかあなたに、今は言えない私の想いを伝えたい。

「レフィカ、動くなよ?」
「え? は、はい……」

 バルコニーの手すりに置かれた私の手に、自分の手を重ねた。

「文献によると、俺から触れれば、平気らしいからな」
「まさか、さっきの文献で!?」
「そうだ。どうすれば、レフィカに触れられるか考えていた」

 笑いながら、ジグルズ様は私の顔を覗き込んだ。

「俺もレフィカに救われた。ありがとう、レフィカ」

 その言葉を聞いた時、私とジグルズ様の出会いは、偶然ではなかったのだと思った。

 ――意味のない出会いなんてない。

「レフィカ。俺はイーザックに五つ目の【契約】を聞くつもりだ」

 ジグルズ様はこの先のことを語り始めた。

「でも、イーザック様とリュザール王は違います。お父様と【契約】した時、イーザック様は私を自由する気はなかったでしょうし……」

 また絶望するのかと思ったら、私は聞くのが怖かった。
 もし、五つ目の【契約】が無効にできるものでなかったら――私は死ぬまで自由を奪われる。

「聞くまでわからない。それでも、駄目なら、また探せばいい。王の力は完璧ではないと、わかっているんだからな」

 ジグルズ様の重ねた手が、王の力は完璧ではないと、私に教えていた。

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